眼鏡越しの風景EP80-開通-
- 2022/10/8
- yukkoのお眼鏡
先日、お墓参りを兼ね実家へ帰った。
今年からスマートフォンに機種替えした父と、変えてから2年以上経つにも関わらず、扱いに不慣れな母からの「HELP!」要請で、娘によるスマホ教室を開催する約束をしていたからだ。
・画面いっぱいに貼りつくアイコンの整理
・便利アプリの紹介と設定
・スマホでしたいことの要望聞き取り、設定
・SNSの設定
・SNSの写真添付、コピー&ペーストの方法、転送・削除
・QRコードの読み取り・登録方法
アイコンをこの写真にしたい、待受画面の画像変更、色を変えたいなど簡単な事から、複雑な事まで多種多様、2人の要望をそれぞれ聞き取っていたら、数時間があっという間に過ぎてしまった。
知らないうちに変なサイトへ入るのが不安、恐いことに巻き込まれるくらいなら、余計なことは極力しないという慎重派の母と、積極的にアプリをどんどん取り入れ、わからないことはなんでも携帯会社のサポートセンターに電話、すぐに解決しようとする好奇心旺盛な父。
母には「そんなに恐々スマホを扱わずとも壊れはしない、そこまで慎重なら変なことにも巻き込まれないので、とにかくいろいろ触って自分で試して」と伝え、自由過ぎる父には「なんでもかんでもアプリを取り画面をいっぱいにしない、野球速報アプリを3つ入れても、試合結果は変わらぬ!」と釘をさした。
父に操作説明をしていた時、メニューを表示するための横棒が3本並んだ「三」のようなアイコンをタッチするよう言うと、父がニンマリと笑い「ハンバーガーを押すんやろ」と言ってきたのだ、使い方はわかっていてもそのアイコンに名前があることを知らなかった私。
何で今、急にハンバーガーの話?と、一瞬戸惑いひるんだ表情を父は見逃さず、間髪いれずに「知らんかったんか~?」と、すごいドヤ顔をこちらに向けてきたのだ。
その後も音声入力機能を少し勘違いしていた私が、父に教えるうちに「あっ!そういうことかっ…」と途中で気づき「そっか、そっか、わかったっ!」と、一人で納得していると、「今まで知らんかったんか?今、気づいたんか?」と聞いてきて、そのたびにとても喜んでいる。
最近は娘から教えてもらうばかりの父は、ここぞとばかりにサポートセンターからの受け売りの知識を自分が知っていた体で、ニコニコ嬉しそうに私に教えてくるのだ。なぜか教えてもらった感じになってしまった私としては、複雑な気持ちだったが、久しぶりにイキイキしている父の姿を見るのがうれしくもあった。
父娘2人してそんなことばかりし、母から「ごはん出来たよ~!」と何度も呼ばれていたのに、スマホ操作をなかなか止めずにいると、遂には「ごはん冷めるでしょ!」と、大人にもかかわらず本気で怒られてしまった。
夕ごはんの後には、父が長姉の娘である姪から届いた手紙と写真を見せてくれた。彼女は本来、私にとっての従姉にあたるのだが、彼女の母である長姉と父は、長女と末っ子でずいぶん歳が離れていたため、父の方が私の従姉と年齢が近く、彼女は昔から叔父である父のことを兄のように慕っていた。
近頃は体調が不安定でほとんど出かけなくなってしまった父と、老後お家でのんびり過ごす彼女、「季節ごと庭の花が綺麗に咲いた」「畑の野菜がたくさん採れた」と、日々のちょっとしたことを短い文章と写真で交換日記のようにやり取りできれば、毎日が少しだけ楽しくなるのではと思い「SNSを繋げてみたら?」と父に提案。初めは「突然、電話したらビックリして、心配するから…」と渋っていたものの、「せっかくスマホを持ち、お互いに見たいタイミングで見れるSNSの気軽さがいいな」と、連絡してみる気持ちになったよう。家の固定電話から、携帯電話番号を聞き、ショートメールを送ってもらうことから始まり、ほぼ私が父のスマホを操作して1時間ほどで完了。
「ついにSNS開通しましたー!」と、二人で大きな拍手。
さっそく従姉から送られてきた返信は、高台の神社から撮られた、東へ向かう一番列車。
くしくもSNSが繋がったその日、父の故郷長崎に新幹線が開通した記念すべき日でした。
♪My Favorite Song
TRAIN TRAIN THE BLUE HEARTS