眼鏡越しの風景EP76-空間-
- 2022/8/13
- yukkoのお眼鏡
学生の頃から雑貨や家具が大好き。
閃いてしまうと、夜中でも部屋の模様替えをしたい衝動にかられて、部屋のベットを動かしてみたり、本棚付の勉強机の本棚部分を工具で外してみたりして、父から「また夜中に何してるんや…」とブツブツ言われていた。それでも「これをこっちに移動させたいんだけど…重くって」と小さな体ひとつで大きな家具を動かせずにいると、呆れながらも父はよく手伝ってくれていた。
中学の時に、両親が新しく家を建てることになり、私も自分の部屋のインテリアを好きにコーディネートしていいことになった。壁紙、照明、家具、カタログを見ながら自分だけの部屋を作るのはとても楽しかった。壁紙のカタログだけでも数冊、素材やデザイン、色、そして部屋の壁は4面、全て同じ壁紙でもいいけれど、1面だけ違う壁紙にしても洒落ている、そんな組み合わせのパターンも入れると無数にあり、私は数カ月間大いに悩んだ。そしてとにかくシンプル、都会的でスタイリッシュなカッコよさをテーマに部屋作りをすることにした。
壁紙は、グレーがかった白をベースに、シルバーとグレーの幾何学模様が散りばめられたものを選び、無機質な印象にしたかったのもあり、窓にはカーテンよりブラインドを選んだ。
宇宙ステーションのような、同じデザインのブラインドで、2つある窓の1つはブルーにシルバーのラインが真ん中に入ったもの、もう1つの窓は配色が逆になった、シルバーにブルーのラインが入ったものを選んだ。自分の中ではちょっとした遊び心がお洒落ポイントだった。
照明にもこだわり、天井のメイン照明以外に、角度を調節できる間接照明のスポットライトを設置。
現代アートのポスター画を飾り、スポットライトとスタンド照明のオレンジ色の光の中で暮らすことに憧れていた。当時はLEDなんてものはまだなく、白熱灯は夏に点けていると部屋の温度が上がって暑くなってしまうのが、難点だったが、スタイリッシュに暮らすには時に我慢も必要であった。
今でもあまり白っぽい蛍光灯の灯りは好きではないので、ダイニングのペンダントライトと、スタンド照明の2つ、薄暗い中で暮らしているのが落ち着く。
その頃は家具もすべて黒で揃え、シンプルな空間が男の子の部屋のようだと、遊びに来た友達がよく言っていた。今流行りの「ミニマム」なライフスタイルの走りだったのかもしれないけれど、その頃はまだ時代が私に追いついてなかった…ということにしておこうと思う。
大人になってからはファブリック製品のメーカーに就職し、住空間やインテリアに益々興味を持つようになった。1人暮らしをするようになると、1部屋だけでなく家全体、全てを自分好みにできることがなによりうれしかった。インテリア雑誌を読んだり、時間が出来ると雑貨や家具をぶらぶら見にいくのも好きだ。
最近はライフスタイルを公開しているインスタグラマーさんのインテリアもよく参考にしている。昔好きだった無機質でシンプルなインテリアは「インダストリアル」スタイルだった。私がこの15年ほどハマっているのは、ニューヨークの工場や倉庫が立ち並ぶ、工業街をイメージした「ブルックリン」スタイル。それを軸に、そこにある「カフェ」をイメージして、『お家カフェ計画』と呼んでいる。アイアンやスチール、金属の工業系のインダストリアルな素材に、革や木という天然素材を組み合わせた家具と、アースカラーを取り入れた大きな観葉植物を置いている。何十年もかけて、お気に入りを少しずつ集めてきたのだ。
昔はあんなにミニマムに暮らしていたというのに、好きなものに囲まれて暮らしたいと、雑貨や家具を集めた結果、いったい何人暮らしなのだというほどに、小さなスツールから、ソファまで椅子が15脚にもなってしまった。毎日違う椅子に座っても、2週間と1日はかかってしまう、椅子屋敷のお気に入りのわが家。
♪My Favorite Song
椅子 森山 直太朗