眼鏡越しの風景EP60-元旦-
- 2022/1/1
- yukkoのお眼鏡
明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。
我が家は田舎が遠いこともあり、三が日の出費に親がザワつくような親戚付き合いや、お年玉マネーが大きく動くことはなく、母方の祖父母と両親からの夫婦セットで、お財布は実質2ポケット。
私たち姉弟以外、近場に子どもはいない。それでもお正月の朝は、いつもは真面目なことを言わない父が、お年玉を渡すにあたり、1年の抱負を一言のべるように言ってくる。家族内での少しかしこまった状況に、恥ずかしさから体をクネクネし、言いあぐねていると、なかなかお年玉を渡してもらえない。
諦めてきちんと座り直し、とりあえず今年頑張れそうな目標を言ってみるのだが、だいたい適当なことを答えていると「もっと、何かあるやろー」と勝手に新年の抱負を父が却下してくるのだ。
それもいかがなものかと思うが、数回宣言した後、ようやく抱負ミッションをクリアし、お年玉を貰うことが出来た。
食卓に並んだ母が作るお節料理と、白味噌に丸餅のお雑煮から新年の朝はスタートする。前から思っていたのだが、誰一人京都と縁もゆかりもないにも関わらず、なぜだかほんのり甘めの白味噌に、里芋や金時人参入りのお雑煮が毎年食卓にのぼる。私が1人暮らしをするようになってからは、昆布ベースの鶏のお出汁に、鶏肉、ささがきゴボウなど根野菜の入った澄まし汁のお雑煮を作っている。私も家族もお雑煮への大したこだわりもなく、美味しければ、どこの地方のお雑煮でもウェルカムなのに、今年の抱負宣言にはなかなか厳しい家だ。
元旦の儀式が一通り終わると、お年玉を何に遣おうかと考える楽しい時間がやってくる。私がゆっくりと想いを巡らせている横で、まだお店も開いていないというのに、なにやらもう靴を履いて出掛ける勢いの小僧、それは弟だ。その時の瞬発力は素早く、お小遣いでも、お年玉でも、貰うとすぐに遣ってしまう“散財タイプ”散財小僧は受け取るとすぐ母に一旦取り上げられ、小出しに一定額しか支給して貰えないという制限付き。そうこうしてる間に弟は、父と一緒に早速お正月の初売りにウキウキと出かけて行った。
いつもお菓子やおもちゃを買って全て遣ってしまい、そのおもちゃも数日遊ぶと飽きてしまい、後から「あっちのおもちゃにすればよかった…」と、だいたい泣きべそをかいて、母に「もう遣ってしまったのだから、お年玉無いでしょ~」と、毎回たしなめられていた。姉弟でも逆に私はあまりにも慎重で、ここぞ!の欲しいものに“貯めて貯めて一気に大きく遣うタイプ”お年玉には子供の頃から一度も手を付けず、貯金箱にひたすら貯める日々。貯金箱が溢れているのを見兼ねた母が、小学4年生の時に私名義の口座を開設、貯まったお金を5年間の定期預金にしてくれた。「自分で持っていなさいね」と、初めて渡された可愛いキャラクターの描かれた通帳は、子ども心を満足させながらも、“通帳”というの響きが少し大人になったみたいでとてもうれしかった。すぐにはおろせない定期預金、これで益々、お年玉が遣えなくなってしまった。何度か欲しいものが出来た時に、解約しようとしたこともあったが、わざわざ印鑑と通帳を持参し、窓口に並び定期を解約するにはハードルが高く、そこまでには至らずだった。
その後20年以上お年玉を貯め続け、ある時大人になった記念にスパッと預金を全額解約、ここぞ!の記念に腕時計を買った。一生分貯めたお年玉で、人生の時を刻み続ける時計、なかなかいい使い道だ。
あの頃のちょっぴり慎重で堅実な私に感謝しながら、また新しい一年が始まる。
2022年元旦
♪My Favorite Song
タイムマシンにおねがい 木村カエラ