眼鏡越しの風景EP47-魔法-
- 2021/7/3
- yukkoのお眼鏡
母から読み聞かせてもらった絵本に「あなたの願いをひとつだけ叶えましょう」という物語があった。シンデレラは魔法の力で素敵な王子様に出逢い、アラジンのランプの魔人ジーニーは、ランプをひと擦りすれば、贅沢に3つも願いを叶えてくれる。そんな夢ある物語に、私は夜ごとワクワクしたものだった。
数年前に訪れた、大阪天王寺の「堀越神社」は「一生一度のお願い」を叶えてくれる、知る人ぞ知るパワースポット。当日の朝、なんとなく思い浮かんだお願い事は “歌が3倍上手くなりますように”と、かなりピンポイントなものだった。10倍でも100倍でもなく、遠慮がちに3倍という数字を選ぶところが私らしい。これから先、人生は長いというのに「一生一度」を、深く考えることもなく早々に使ってしまったことを、少し悔やんでいる。
子供の頃、「もしも願いが1つ叶うなら?」と大人たちの問いかけに、
「その時流行りのヒーローやアニメのキャラクターになりたい」
「たくさんお菓子を食べたい」
「あのおもちゃが欲しい」
「お金持ちになりたい」
「誰々と結婚したい」
と、子供らしいものから、
「空を飛びたい」
「透明人間になりたい」
など超人技のお願いごとまであり、みんな目をキラキラさせながら、も・し・もの話を楽しんでいた。
その中でも、私はいつかそんな幸運が自分に訪れたら、小さい頃から大人の今も、この願いにしようとずっと決めていたことがある。
「魔法使いになりたい!」
閃いた時には、自分だけがこの万能なお願いに気付いてしまったのだと、今まで誰にも言わず、胸の奥で温めてきたのだ。
お菓子も、おもちゃも、ヒーローも、空だって飛べてしまう、その他の全ての願い事は、手に入れた魔法の力で、どんどん叶えていけばいいのだから。それはそれは素晴らしくいい考えだと思ったのだ。恐らく、お願い事ルールブックにも「魔法使いになることを禁ず!」とは書かれてはいない。こんなことが「世界お願い事協会」に知られてしまったら、たちまちルールが改定される大問題だ。そんなことを心配しながら、幼少期は過ぎていった。
そして、大人になった私は数年前、数々の煩悩を払うべく、霊験あらたかな高野山へ、一泊二日のにわか修行へ出かけることとなった。あちこちのお寺を巡る内に、お願い事がだんだんと思いつかなくなってしまい、とうとう手を合わせたまま立ち尽くしてしまった。
そんな時、道すがら出逢ったご婦人から、お願い事をする時は「良縁成就がオススメよ」と教えて頂いた。良縁成就というと、恋愛や結婚を思い浮かべてしまいそうになるが、良縁とは、家族や友達、気の合う仲間、就職先の会社、お仕事先のお客さん、上司、同僚とのご縁、病気をした時は、信頼できる病院やお医者さんとの出逢いも含め、納得のオールマイティーな願い事だ。それからというもの、私の定番のお願い事は「良縁成就」 となった。
今思うと、魔法の呪文ひとつでなんでも叶ってしまう人生はきっと味気ないっ。
「良縁成就」
神様の助けをほんの少し借り、使い終わりの「一生一度」の半券を握りしめながら歩む人生も悪くない。
♪My Favorite Song
魔法のコトバ スピッツ