眼鏡越しの風景EP39-音色-
- 2021/3/13
- yukkoのお眼鏡
音楽を始めるようになり、気づいたことがある。
街中ですれ違う“楽器を持つ人”が世の中こんなにも多いということ。
人混みの地下街や、大通りのアーケード、駅や電車のホームにも、気づくと私の中のミュージックセンサーがロックオン。楽器を抱えた人たちが赤い丸印を付けたかのように視覚に止まる。
今までも一定の割合で、“楽器を持つ人”と、すれ違っていたはずなのだが、一旦、自分のチャンネルがそこに合ってしまうと、それまで気にも止めなかったものが浮き出て見えてくるのだ。どんな人混みでも、かなりの割合でミュージシャンを見つけることが出来る。
カフェやお店のBGMもそうだ、きっとそれはカフェで以前から微かに流れていたであろう“ノラ・ジョーンズ”。お気に入り曲になった途端、喧騒の街中をかき分けるようにあちこちから自然と耳に聴こえ始める。バンドで新しく始めたばかりの洋楽が、デパートの店内BGMから軽やかに流れてきた時には、思わずハモリパートまで口ずさんでしまった。
楽器を持つ人たちは様々、そこにはそれぞれ好きな音楽があり、憧れるアーティストがいて、培ってきた音楽人生がある。エスカレーターや階段で楽器を背負う後ろ姿を見ていると、どこか誇らしげに楽器ケースに貼られたライブ出演者用のPASSやライブハウスのステッカー、彼等のライブ歴史を垣間見たような熱いものを感じる。
ついつい追い越し、どんな人か見てみたくなり、少し早歩き。
短い制服のスカートにエレキギターやベースを背負っている女の子を見かけることもよくある。
高校の軽音部かな?
放課後はバンドのスタジオ練習?
追っかけるバンドのツアーグッツだろうか、キーホルダーが揺れていることもあれば、バンド仲間とのお揃い?、小さなマスコットや缶バッチが付けられていることもある。似たようなギターケースの取違い防止にも有効、その小さな主張も個性だ。そんな後ろ姿や出で立ちから彼等の音楽のバックグラウンドを想像すると楽しい。
通りすがりの見ず知らずの人達、決して答え合わせなど出来ないけれど、音楽という小さな共通点。それだけで、どこか音楽を愛する“私たち”という気持ちになってしまう。
背負われた大きなギターケースの中には、どんなお気に入りのギターが入っているのだろう?
どんな曲が好きで、どんな音を奏でるの?
ドラマーさんは、スネアドラム、シンバルにペダル、大きな荷物がずいぶん重そうだ。
背中の小さなケースはウクレレだろうか?
ウクレレに似た手持ちのハードケースはバイオリン?
曲線美しきはサックスが入っているのだろう。
男性の背丈ほど大きいウッドベースを持ち運びしている姿にも出逢う。
頭の後ろからはみ出るほど大きな縦長長方形のケース担ぐ、逞しきキーボード女子も移動は電車だ。
鍵盤弾きたちが街中で気軽に弾けない、ピアノ持ち歩けない問題解決のストリートピアノの出現は画期的だった。『街中に音楽を…』をコンセプトに、諸説あるものの日本のジャズ発祥の地と言われる神戸ならではの取り組み。
今まで街の風景と一体化し、すれ違っても顔さえ覚えていない見ず知らずの行き交う人たちが、流れるような音色でピアノを弾く姿、“通りすがりのピアニスト”を尊敬の眼差しで見つめてしまう。買い物袋を横に置き、何気なく指を鍵盤に下すと、サラサラ~と弾き去って行く人のなんと多いことよ。“能ある鷹は爪を隠す”とはよく言ったもので、そんなことわざを毎回思い出してしまう。
以前、テレビで見た北海道小樽のサンモール一番街のストリートピアノに憧れ、いつか小樽を訪れた際には、弾いてみたいと思っていた。
今では神戸のストリートピアノが全国的にも一番多く設置されているのではないだろうか、あちこちで見かけるようになった。通行人観客多めの行列が出来る街角ピアノから、人通り少なめひっそりと置かれているピアノまで。
一度憧れのグランドピアノを弾いてみたくて、ドキドキしながら私もひっそり置かれたピアノを、こっそり弾きに行ったことがある。
街中に音楽が響く港町 神戸
遠くから聴こえる音色に、鼻歌は今日も軽やか。
♪My Favorite Song
Don’t Know Why Norah Jones