眼鏡越しの風景EP35-横顔
- 2021/1/16
- yukkoのお眼鏡
歩く時。
ごはんを食べる時。
手を繋ぐ時。
あなたにとって居心地のいいのはどちら?
右側? 左側?
はたまた 誰かの隣?
学生時代の親友は必ず私の左側に居た。大学の構内でも、街中でも。
たまたま右側に来てしまっても、お喋りをしながらごく自然に、そしてさりげなく後ろに回り込んでは、常に私の左側をキープしていた。
2人の時も、3人以上複数の時も、一番左に居て、右を向いて私たちと話していた。
そんな彼女はなかなかの美人で、右の横顔がお気に入りなだけだったのかもしれないが、彼女曰く左側に人が居ると違和感があり、なんとなく居心地が悪いのだそうだ。
彼女と出会う前までは、誰がどっちに立とうがあまり私自身、意識していなかったけれど、いつからか私もなんとなく人の左側をキープする癖がうつってしまっていた。
この心理はいったい何なのだろう。人間の心臓が左にあることと、なにか関係しているようにも思う。
人の左側に立つということは、自分の体の右部分が誰かと接している状態、無意識に急所である左側の心臓を守る心理が働いているからではないかと私は分析している。
右利きの私が、もし相手から攻撃された場合、利き手で防御できるというメリットもある。
「戦国時代かよ!?」
「いやいや、横に居るのは友だちだよっ!」
と、一人ノリツッコミになってしまうが。
こんなことを深く考え出すと、不意討ちに合った場合はどうするっ!?というような、サバイバルな武将的発想になってしまいがちだ。
逆に、隣にいる相手からしてみれば、心臓のある側、左の懐に入られているので、親しみや安心感が生まれる。
恋愛において、これからアプローチしよう!とか、親密度を高めたいなら、相手の左側を陣取ることをオススメする。
思えば私が今まで出会った、立ち位置を気にする人たちは、全て女性だった。
女性は生まれながらにして身についた、この恋愛成就の心理作戦で、恋を数々成就させてきたのかもしれない。
先日、別の友達とお出かけした時、私も彼女も左側をキープしたい派だった。
街中を歩きながら、お互い相手がお店で商品を見ている間に、シラ~っと左側に回り込んだり、無言の左側争奪戦が繰り広げていた。
二人してそんな攻防を繰り返していると、私たちはどんどん道の左端に追いやられていった。
「もしかして… ○○ちゃんも、左側派?」
「バレたかっ」
と、不敵な笑みを浮かべた後、二人で大笑いした。
お昼ごはんの時は向かい合わせに座った。
しかし、その後に入ったカフェでは、恋人シートさながらの横並びに座ることとなってしまった。
彼女の方がちょっとだけ左側愛が強く、どうしても右側は無理だと言うので、今回は泣く泣く左側を譲った。
そんな私は、左側以上に向かい合わせの真正面同士の対面席が昔から大の苦手。
家族や友達、大好きな人であっても、真正面では視線がウロウロ、体はモジモジ、対面席はどうも落ち着かない。
毎回、テーブルを挟み対角斜め、視線をうまく外せるよう座ることにしている。
4人席に2人で座るときには、まず相手が先に着席するのを確認してから、対角線上に座る。
「あっ、こっちなのね」と相手が気遣い、真正面の席に座りなおしてくれることがある。
気軽に言える友人の場合は「真正面、苦手なんだぁ…」と伝える。
お仕事などの関係上、言いにくい場合は、苦笑いしながら相手に気づかれない速度で、お尻をジリジリと少しずつ横にずらし、間違い探しかのような微妙な変化で対角に移動するようにしている。
相手がどうという問題ではなく、ジーッと真正面で見つめられるのは恥ずかしい。
目立ちたがり屋の隠れシャイ(なんだよそれ!)ということにしておこう。
見つめる先の横顔に、最大の愛しさを込め…
『左隣の女たち』
そんな名前を彼女たちに贈ろう。
♪My Favorite Song
横顔 aiko