眼鏡越しの風景EP34-初詣-
- 2021/1/2
- yukkoのお眼鏡
子供の頃、初詣というものに行ったことがなかった。
「寒い中、電車で人混みに出るのも大変だしなぁ~。家に居よっ」
わが家の徒歩圏内には神社がないというそんな理由だったように思う。
両親は仕事の初出のついでにお参りしていたり、なにかしら年始のご挨拶は済ませていたようだ。
神様からすると初詣をさぼっているけしからん奴は…家族の中で私だけ。
それでも大人になった私は、わりと源を担ぐ方だ。
父にいたっては、『服を洗い流す→福を洗い流す』ということで、三が日は洗濯するのも、外に干すことも、もちろん厳禁。
学生の頃は何も考えず洗濯機のスイッチを押すと「お正月に洗濯する奴があるか!」とよく怒られていた。
なのに元旦に初詣に行かないという、なんともちぐはぐな緩いルールの家だった。
実家を出てからは毎年、遅刻気味ではあるが、初詣は必ず行く。
本来は、家の一番近くの神社が守護神らしく、そんなことを聞きかじると、暑い夏の時期に早起きして、毎朝自転車を走らせては、近くの神社にお参りしてから出勤していた。イメージは大森一樹監督の尾道三部作、そんな昭和の坂道系映画が再びマイブームになり、そんなことをしてみたかっただけのような気もする。
道路から階段を上がると高台になっていて見晴らしがいい。夏風に境内のくすの木の葉がサヤサヤと揺れる静かな神社だ。初詣もまずその神社に一番にお参りする。ただそこは宮司さんが常駐していない小さな神社で、おみくじが引けない。
そのあと今度は家から二番目に近い、地元で有名な大きな神社行くのだが、その神社とは、どうもおみくじの相性が悪い。
引っ越してからの3年間、1年目は凶、翌年以降は末吉や小吉なのに、全くイイコトが書かれていなかった。「吉なのに、これ書いてること凶なんじゃないの?厳しすぎぃ~」と思うほど辛口な文面。お正月から毎年へこむのもやるせない。4年目からはその神社で、おみくじを引くのを止めた。
地元を仕切ってます!というほどの大きな神社、通勤途中毎朝前を通るし、うしろ髪引かれるので参拝スルーはさすがに申し訳なく、お正月はご挨拶のみ。おみくじはまた後日、別の神社へお参り。結果的にお正月は3社も行くことになってしまう。おみくじ用の神社はその時々で、地方の有名神社だったり、お出かけついで、自分の直感で決める。今年の運勢を左右することであるが、そこは好きな神社を選んでいいルールにしている。ここ最近は湊川神社との相性が抜群で、2年連続『大吉』を引き続けている。
とある年の三が日、フラっとライブバーを訪れると、示し合わせたように音楽仲間が集い、気が付くと知った顔ばかり、歌ったり、演奏したりと、ひと盛り上がりした後、おみくじの話になった。
「今年、おみくじ引いた?」
「引いたよ~。私、大吉~!」
「俺も大吉~!」
「私も大吉だったよ~」
「俺も!」
財布から各々とり出したおみくじを、みんな印籠のように掲げた。見せ合ったおみくじは全て大吉。
「すごーい!」
「で、どこの神社へ行ったの?」
「湊川神社」
「えっ!俺も湊川」
「俺も~!」
「えー!みんな湊川神社じゃんっ!」
大吉4人衆は、1人を除いてみんな湊川神社で大吉を引き当てていたのだ
「えっ!?大吉率高過ぎっ」
「大吉ばっかり入ってるのかなぁ?」
幸運を引き当てた喜びが揺らいだその一瞬、、一人がぼそっと言った。
「…俺、小吉」
引きの強い音楽仲間が勢ぞろい。小吉の彼の運気もカバー出来るほどの、なんとも心強いメンバーだった。
2021年今年はどこの神社で、おみくじを引こう?
また、楽しく音楽出来る日が来ますようにと、願いを込めて…
♪My Favorite Song
青空 THE BLUE HEARTS