眼鏡越しの風景 EP21 -四桁-
- 2020/7/4
- yukkoのお眼鏡
駅で電車を待つ暇つぶしに、子どもの頃からついついしてしまうことがある。
4桁の数字を目にすると始まる「勝手にジュー数」という私が密かに付けた変なネーミングの「暗算系頭の体操」アナログゲームだ。
そのルールは単純なもので、4つの数字をそれぞれ一回だけ使って四則演算し、さらに出てきた答えを使い、最終的に答えが10となればいいのだ。
向かいのホームに滑り込んだ電車の車輛番号。
手に握りしめている切符の番号。
線路脇の側道を走る車のナンバープレート。
世の中には4桁の数字があっちにもこっちにも溢れている。
改めて調べてみると、「勝手にジュー数」などというへんてこりんな名前でなく、「テンパズル」というカッコいいネーミングが付いていた。
例えば、数字が「5432」の4桁であれば、
まずは、5-2=3
計算で出た数字の答え「3」と、4桁数字の使用していない残りの「4」と「3」を使い、
4+3+3=10という具合に、10になればOK。
小学生の頃、毎週電車とバスで水泳教室に通っていた。子供数人に対し、お友だちの親が1人当番として付き添い、プールへ送り届けてくれていた。
小学校低学年の子供たちは、電車でわちゃわちゃと騒がしく、引率もかなり大変だったと思う。
ある日、引率していたママが、子供たちを静かにさせる為、みんなに一声。
「さて問題です!」
「自分の持っている切符の数字を使って、早く10に出来た人には、今日のおやつを1つおまけね~!」
お腹を空かせた水泳後に毎回食べるちょっとしたおやつは、みんなの最大の楽しみだった。
「1つおまけ!?」と聞いた瞬間、みんなの目の色が変わった。
余りのおやつは3つ、子供は7人だ。
「よーい、スタート!」
子供たちは切符の数字をジーッと見てはブツブツ
「あーでもない、こーでもない」と暗算。
閃くと誰もがニンマリし、引率ママに駆け寄り、答えをコソコソ耳打ちした。
早く正解した子は、他の子の難解な数字の羅列を背後から覗き込みながら、
「僕、もうわかっちゃったもんね」と、余計なおせっかいをしていた。
そもそも、この遊びは答えを導き出す過程がゲームの答えとなっていて、
正解を耳打ちするためには、頭の中で整理し伝えることが必要で、余計なお喋りをしていると計算式を忘れてしまい、答えを伝えることができなくなる。
引率ママの狙い通り、見事に電車内は静かになった。
私はというと、水泳教室のライバルでもある奴の
「僕、もうわかちゃったもんね~」
が毎回悔しくて、水泳教室以外の日も4桁を見ると、
目に入る数字を片っ端から「10」にする変な癖を身に付けてしまった。
あの日の「さて問題です!」から数十年。
電車待ちのホームで思い出すのは、アイツのしたり顔と「四桁加減乗除症候群」の癖だ。
♪My Favorite Song
くせのうた 星野 源