眼鏡越しの風景 EP10‐孤独‐
- 2020/2/1
- yukkoのお眼鏡
十数年前の金曜、終電近い山手線は飲み会帰りの人たちでごった返していた。
私は東京の街を肩を落としながら歩いていた。
神戸から上京した私は「この服でよかったのか」と大きな鞄の中身を思い出しながら、
最新のファッションに身を包む人たちを横目に、窓ガラスに映る疲れた顔に深いため息をついた。
雑誌に載っていた路地裏通りのお洒落な洋服屋さん、
テレビで話題のスイーツ店、
目の前に飛び込んでくる看板やネオン、
歩いていると、その色彩の多さに自分の目元を何度か押さえていた。
華やかな都会の街は、朝も夜中も賑やかで、たちまち街のパワーにのまれてしまう。
ふと見上げた先には、高層ビルの隙間から窮屈そうな灰色の空。
どんなに背伸びしても、ここからは小さな空しか見えない。
「帰りたい。」
何度も上京する中、何百人、何千人もの人たちとすれ違った。
何百人、何千人もの人たちは、その誰ひとりとして私のことを知らない。
「こんなにも人がいるのに。」
それは初めて感じる孤独だった。
すれ違う人たち、みんなが都会を器用に泳いでいるように見えた。
こうしてこの曲は生まれた。
『僕を探してる~the missing piece~』
♪ 夜が更けぬこの街に 偽物の星が光り
♪ 夜が更けぬこの街に 偽物の星が光り
月明かり避けるように 影を辿る帰り道
見上げた同じ空と 思えない日々で
乾いた空気の中 溺れてる魚で
見失ってしまった 輝くあの海を
ビルの間泳ぐ 君が残す光の泡 the missing piece
あの頃の私のように、都会でがんばる誰かにこの歌が届きますように。
♪My Favorite Song
僕を探してる~the missing piece~ yukko