眼鏡越しの風景 EP5‐旅路‐
- 2019/11/23
- yukkoのお眼鏡
我が愛しき相棒のママチャリ「オレンジ号」
そのペダルで、往復6kmの道のりを約9年間漕ぎ続けている。
大雨や嵐の日を除いて、1年間で330日くらいになる。
これまでの走行距離をざっと計算してみると、
6km x 330日 x 9年間 = 17,820km
ブラジルの首都ブラジリアまで17.674km。
日本から一番遠いウルグアイまで18.579km。
出発したあの日からみれば、今は日本の裏側を旅してることになる。
桜吹雪、舞い散る春。
太陽の下、汗かいた夏。
銀杏落ち葉、黄色い秋。
鼻の頭赤く、息切らす冬。
そして、また春が来て。
夏が来て。季節は巡る。
私は同級生と比べて体が小さく、
自転車の補助輪が取れたのは一番最後だった。
乗れたら乗れたで嬉しさ爆発。
勢い余ってT字路先の側溝に激突し落下。
鍵っ子特有の我慢強さか、
激突落下の恥ずかしさなのか、
助けを呼ばずに、ひとりで溝から自転車を引き上げた。
気付けば大泣きしていた。
時折、泣くのを弱めて鼻や口をヒクヒクさせ、
肘や膝にできた怪我の痛みを確かめる。
出血してるのがわかると、大粒の涙が溢れ、
泣き止んではまた泣くを繰り返した。
家の玄関先に、負傷治療の拙い痕跡を残したまま、
夜仕事から帰って来た母が仰天したことは言うまでもない。
あれから数十年経つ。
便利になった今でも、私は自転車に乗るのが好きだ。
得意の想像力を膨らませると、
毎日のペダルひと踏みで、
季節も世界も、時空だって飛び越えられる。
この旅はこれからも続く。
今日もまたペダルを力強く踏み込んだ。
♪My Favorite Song
風の自転車 遊佐未森